[COLUMN] Bridge Note

2023/06/23

素材の話 -木材編③- 「表面塗装の種類について」

こんにちは、宮地です。


先日、歯医者に行ってきました。
虫歯が、とかではなく、定期的なお掃除です。
歯石除去と歯の隙間のクリーニングをした後、
専用の機械で綺麗に仕上げ磨きをしてもらって終了です。
30分ほどで全てが終わりますが、
毎回とても爽快で、例えるなら、頭の毛穴の汚れがすっかり
綺麗になったような、そんな開放感があります。

お恥ずかしい話、幼少期は歯磨きがあまり
好きではなく、よく虫歯になっていました。
それを治す度に激しい痛みと戦うことになり、
もうこりごりだ、治療はしたくない、と、
それ以来すっかり心を入れ替えた私は、きちんと歯を磨き
定期メンテナンスにも行くようになりました、とさ。
はみがき、はみがき。



今も3ヶ月に1度、メンテナンスしてもらっています。
おかげで虫歯などの異常も全て早めに見つかって
最小限の治療で済んでいるので、非常に助かっています。

おじいさんになっても自分の歯で
おせんべいにかじり付きたいので、
可能な限り続けたいと思います。

家具も一緒ですね、大事にメンテナンスをして
長く愛用したいですね。

なんだか家具と無理やりこじ付けたみたいな
トークになりましたがそんなつもりはないですよ?
ほんとに、いやほんとほんと。


さて、今回は、木材編最終回。
表面塗装の種類と取り扱い方法などについて
説明していきたいと思います。

当店では、家具の表面塗装を大きく分けて2種類
「オイル仕上げ」と「ウレタン仕上げ」から
お選びいただいております。

この2つの塗装の特徴を、
メリットとデメリットの観点から説明します。
家具選びの際の参考にしていただければ嬉しいです。


「オイル塗装」
最もポピュラーな表面塗装のひとつで、
木材表面に専用のオイルを馴染ませただけの
比較的シンプルな塗装方法です。

・メリット
①木の温もりをそのまま楽しめる
木肌にオイルを馴染ませているだけなので、
家具を触って天然木独特の温かみを感じることができます。
ほのかに木の香りが漂います。

②傷やシミ、汚れなどのメンテナンスが家庭でできる
たとえ傷やシミができても、紙ヤスリで削り取って、
再度オイルを塗り直すことで、ある程度新品の状態に
近づけることができます。慣れるまでは大変ですが、
慣れてしまえば特別大掛かりな作業ではなくなります。

収納家具の戸枠に付いた傷。この程度なら削ってオイルを塗れば直せます。

傷が付いてもその場でパパッと修復できるので
極論を言えば常に綺麗なテーブルに保つ事も可能です。
当然、傷の深さや範囲によっては直せないものもあります。

③傷が付いても「それも味」として受け入れ易い
金属や樹脂に付いた「いかにも」な傷よりは
木材や革製品などに付いた自然な傷の方が受け入れ易い、
という感覚に共感いただければオイル塗装がおすすめです。
また、そういった傷の方が「これはあの時の傷だ」と
後々笑い話や思い出になり易く、家族の歴史として
比較的受け入れられ易い傾向にあります。
これに関しては割と主観も入ってきますが、
「ウレタン塗装と比べて」という意味合いで
お考えいただければ幸いです。

・デメリット
①水分に弱いので、シミがつき易い(水拭きNG)
表面はオイルを塗っただけのほぼ剥き出し状態なので
基本的に水分や油分は全て吸います。(特にドレッシング!)
つまりシミができてしまう、ということなので注意が必要。
コップの輪染みの様なシミが一番ショックが大きいかと。
ただ、メンテナンスの作業が別段負担でない方にとっては
大した問題ではないので、一概にデメリットとも言えない。
と言いたい。です。

②薬品や洗剤などでの洗浄、除菌が出来ない。
先程と同じ理由で、薬品や洗剤も吸ってしまうので
木にとっては良くありません。特にアルコールや洗剤は
せっかく塗ったオイルの成分を溶かしてしまうので
相性が良いとは言えないでしょう。
むしろ、アルコール成分によって溶けたオイルと相まって
天板に残された他の成分も木目に蓄積されてしまいます。
そうすると、メンテナンスの際に天板を削ると
ボロボロと消しゴムカスのような形となって溶けた
成分が出てきてしまい、削る作業が非常にしにくいので、
できればNGと言いたい。です。

③人によってはメンテナンスのハードルが高い
シミや傷を消せるメンテナンスですが、
修復するだけでなく、テーブルが乾燥して
ヒビ割れを起こさないためにオイルの油分を定期的に
補ってあげるのもメンテナンスの大事な役割です。
大体年に1~2回が適切な回数となりますが、
ダイニングテーブルなどの面積が広い家具の
メンテナンスは中々大掛かり。
DIYが好きな人や慣れている人は問題ないですが、
慣れてないと結構な手間に感じてメンテナンスを
先延ばしにしてしまい、結局何年もそのまんま。
気がつけばテーブルが乾燥でヒビだらけ、なんてことも。
一度ひび割れた天板は元には戻せないので要注意です。
傷やシミは削り取らなくても、ヒビ割れ予防として
せめてオイルを塗り足すだけでも大きく違いますので、
定期的にメンテナンスしてあげてくださいね。





「ウレタン塗装」
天板表面にウレタン樹脂を吹き付けて膜を張る塗装方法。
ウレタン塗膜の厚さによって光沢の度合いが変化するので、
オイル仕上げとあまり変わらないマットな表情から、
鏡のようにピカピカした表情まで幅広いのが特徴です。
当店のウレタン塗装は、マットな薄い塗膜です。

・メリット
①水分に強いので、水拭き可能
見た感じは木目なので気が引けそうですが、
ウレタンの塗膜があるので、水拭きはOKです。
ただ、ウレタン塗装は完璧な防水ではないので、
水やお茶などをこぼしてそのまま長時間放置したり
必要以上にゴシゴシするのは避けてください。
固く水を絞った布巾で軽く拭くくらいは問題ありません。
深い傷がついている場合は、そこから水が侵入するので
注意が必要です。

②家庭でのメンテナンスは不要
塗膜が木を守っているので、ヤスリで削ったり、
オイルを塗ったりする必要はありません。
それだけで結構テーブルの扱いは楽になります。

③薄めた中性洗剤などで軽い洗浄も可能
これは最初のメリットに近いですが、
「オイル塗装と比べて」油汚れなどの
しつこい汚れにも対応できる、という点では
大きなポイントになり得ます。
酸性、アルカリ性などの強力な洗剤は控えてください。
アルコールもおそらく問題ありませんが、
吹きつけたあとはすぐに拭き上げないと、
スプレーした跡が乾燥して残り、拭き取り辛くなります。
また、含有成分によっては影響がないとも言い切れないので
一旦天板の裏面などで試してみてから使用するように
してみてください。

・デメリット
①傷が付いたら付きっぱなし(工場での修理は可能)
オイル塗装のように傷を削ってその場で修復することが
できないので、傷は基本的に蓄積する一方です。
一応工場へ預ける等すれば綺麗に修理できますが、
テーブルが長期間使えなくなるのと、費用が数万円と
結構出費が大きいので、あまり頻繁にはできません。
5~10年ほど使って、まだ構造にガタが来てなさそうなら
その時に検討するくらいがちょうど良いです。

②傷のつき方が露骨になりやすい
木ではなく、表面のウレタン樹脂が傷つくので、
傷のつき方は白っぽくクッキリと跡がつきます。

ウレタン塗装に付いた傷。塗装の表面に大きな傷が付いています。


種類としては、車のボディに付いた傷と同じ感覚です。
先ほども言いましたが、革財布の傷に愛着は湧いても、
車のボディに付いた傷は傷でしかない、という感覚に
共感する方にとっては、デメリットになり得ます。

③熱に弱い
木自体も熱に強いわけではありませんが、
表面のウレタン樹脂は、より熱に弱いので、
場合によっては樹脂が溶けて白く変色してしまいます。
熱々の飲み物の入ったカップや機械類の放熱など、
熱をもった物は直置きしないようにご注意ください。

④木の温もりはあまり感じることが出来ない
何度も言いますが、表面はウレタン樹脂なので、
触り心地自体はプラスチックのそれとほぼ同じです。
木を触っているようで、実際はウレタン樹脂を
触っていますので、木の温もりは感じづらいです。
当店のウレタン塗膜は割と薄い部類に入るので、
比較的光沢は抑えめですが、それでも多少は
光を反射しますので、照明の度合いによっては
木の温もりは多少損なうかもしれません。


最後に、木製家具を扱う上での注意点を少しだけ。

・湿度はできれば40~60%程度に保つ。
・急な温度変化は避ける。
・冷暖房の風を直接当てない。
・直射日光を当てない。
・家具の上に立ったりしない。


これらを意識するだけで、家具は数段長持ちします。
「家具は一生物」とよく言いますが、それは家具を
大切に扱って初めて現実になると私たちは考えています。
私も全てを完璧に守っている訳ではありませんが、
それを知っていただくだけでも大きく変わります。
大切な家具を是非長く愛用していきましょう。


長くなりましたが今回はこれで以上です。


皆様の家具選びのひとつの指標になれば嬉しいです。
その他分からない事などあれば
なんでもご相談ください。

次回は番外編、ということで、
オイル塗装のメンテナンス方法を詳しく
お話したいと思います。


それでは、また。

BRIDGE WORKS 宮地 康行
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